症例で解説する確定診断方法
紹介した症例は実臨床例での一部であり、全ての症例が同様の経過を示すわけではありません。
全ての写真及び動画は患者さんご本人又はご家族の許可を得て掲載しています。
30代でⅢb型SMAと確定診断された症例
監修・症例提供:大阪急性期・総合医療センター 隅蔵 大幸 先生
監修・症例提供:大阪急性期・総合医療センター 隅蔵 大幸 先生
確定診断に至るまでの過程

臨床所見のポイント
臨床所見のポイント
◉ 動画
<歩容>
<臥位からの起き上がり>
<立ち上がり>
<蹲踞姿勢>
<振戦>
◉ 筋生検画像

◉ MRI画像

大腿四頭筋は著しく萎縮し高度に脂肪変性

大殿筋に比べ腸腰筋の萎縮が目立つ

二頭筋に比べ三頭筋の萎縮が目立つ
本症例の確定診断に至ったポイント
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筋ジストロフィーの疑いとして筋生検を実施したところ、神経原性変化を認めた |
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筋電図においては、動員パターンの評価を以て神経原性変化と筋原性変化の判別をすることが重要 |
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筋ジストロフィーの疑い症例に対しては、SMAを常に念頭において診療にあたる習慣をつける |

• | 発症から20年以上が経過して確定診断された。 |
監修医の考察
前医の脳神経内科より筋ジストロフィーの疑いとして診断確定のため紹介を受け、先入観に囚われ筋ジストロフィーと誤診したまま筋生検を実施したところ、神経原性変化を認め筋病理診断医によりSMAの可能性をご教示して頂いたおかげで最終的に遺伝学的にSMAと診断することができました。フォロー中に症状の悪化はなく自立歩行レベルの内にスピンラザを導入できたことは不幸中の幸いでした。
誤診に至った最大の理由はSMAに対する臨床医の認識不足と筋電図判読の間違いによるものでした。特に筋電図において重要なことは、あくまで動員パターンの評価を以て神経原性変化と筋原性変化の判別をすることです。
本例は強収縮時の動員の減少および高振幅MUPについて、「神経再支配が十分に及んだ非活動性神経原性変化」と基本に忠実に解釈できていれば誤診を防げたはずでしたが、筋MRIにて脂肪変性が著しく進んだ画像所見に囚われ「針先近傍の運動単位数は著しく減少し慢性筋疾患の末期の状態を反映した所見」と解釈を誤ったためにSMAを考慮する機会を逃してしまい、結果的にスピンラザの導入が遅れてしまいました。
筋ジストロフィーの疑い症例に対しては、SMAを常に念頭において診療にあたる習慣をつけていれば未然に防げた誤診であろうと考えています。
大阪急性期・総合医療センター 隅蔵 大幸 先生
「遺伝学的検査・受付窓口のご案内」
● | 東京女子医科大学 ゲノム診療科
お問い合わせ
|
● | 神戸大学医学部附属病院 検査部
名誉教授:西尾 久英 先生 部長:矢野 嘉彦 先生 お問い合わせ
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● | 株式会社ビー・エム・エル
お問い合わせ
電話:049-232-3131 Fax:049-232-3132 |
脊髄性筋萎縮症が疑われる場合に行われる遺伝学的検査に対して、以下の遺伝学的検査料を、原則として患者1人につき1回算定できます。2回以上実施する場合は、その医療上の必要性について診療報酬明細書の摘要欄に記載ください1。
5000点:「D006-4」遺伝学的検査(処理が複雑なもの)2
注) | 遺伝学的検査の実施に当たっては、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日、令和2年10月一部改正)3及び関係学会による「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2011年2月、2022年3月改定)4を遵守ください。 |
1. | 令和4年3月4日保医発0304第1号 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1(医科点数表)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html)Accessed June 20, 2022 |
2. | 令和4年厚生労働省告示第54号 診療報酬の算定方法の一部を改正する件<第2章>検査 (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00037.html)Accessed June 20, 2022 |
3. | 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日、令和2年10月一部改正)(https://www.mhlw.go.jp/content/000681800.pdf)Accessed June 20, 2022 |
4. | 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2011年2月、2022年3月改定)(https://jams.med.or.jp/guideline/genetics-diagnosis_2022.pdf)Accessed June 20, 2022 |
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