症例で解説する確定診断方法

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

10代で症状発現、60歳でSMAと確定診断された症例
監修・症例提供:神戸大学大学院医学研究科 脳神経内科学 関口 兼司 先生

確定診断に至るまでの過程

関口兼司, High amplitude MUP 大腿前面筋萎縮, 症例から考える針筋電図(関口兼司, 幸原伸夫), 28, 2017, 診断と治療社. より改変

上記の所見から、神経筋電気診断による追加検査を実施
電気診断による診断ストラテジー
針筋電図:神経原性/筋原性疾患の判別
神経伝導検査:感覚神経障害の有無を確認
神経伝導検査
感覚神経の異常がないので、球脊髄性筋萎縮症の可能性が下がる。
筋CT検査
三角筋は、前方は保存されているが後方は萎縮している。
上腕二頭筋は保存されているが、上腕三頭筋は脂肪置換している。
大腿四頭筋は高度に脂肪置換している。
本来見えるはずの腸腰筋の陰影が見えない。脂肪置換している。
筋CT検査
関口兼司, High amplitude MUP 大腿前面筋萎縮, 症例から考える針筋電図(関口兼司, 幸原伸夫), 28, 2017, 診断と治療社. より改変
針筋電図検査
上腕二頭筋(MMT 5)随意収縮:2mV/div
安静時放電なし。
軽い随意収縮時において、1つのMUPは5mV以上と高振幅があるが持続時間は短い(筋線維密度増加よりは電極が少数の筋線維に近接しているため)。
発火頻度10~12Hzの状況下で、3~4種類のMUPを認める。
必ずしも運動単位の減少があるとは断定できない。
軽度の慢性神経原性変化の所見。

三角筋(MMT 4)随意収縮:2mV/div
安静時放電なし。
振幅が10mVを超え、持続時間が長いMUPが高頻度(発火間隔 50~60ms:16~20Hz)に放電。
Giant MUPを認める。
再支配によって維持されている所見。

大腿四頭筋(MMT 1)随意収縮:1mV/div
安静時放電なし。
完全に再支配が完成した神経原性MUPを認める。
かなり強い収縮でも2種類しかMUPが得られず、発火頻度は最大20Hz以上と上昇。
高度に萎縮した筋でMUPが減少している。
神経原性疾患を決定づける所見。

関口兼司, High amplitude MUP 大腿前面筋萎縮, 症例から考える針筋電図(関口兼司, 幸原伸夫), 30, 2017, 診断と治療社. より改変

本症例の確定診断に至ったポイント

神経伝導検査:明らかな異常所見なし(※無症候性の感覚神経障害を除外)。
筋CT検査:両側での三角筋、上腕三頭筋、腸腰筋、恥骨筋、大腿四頭筋に脂肪置換あり。
針筋電図検査:安静時活動において、線維自発電位陽性鋭波がなく、活動性はない。Fasciculation potential(線維束電位)が認められ、神経原性疾患が疑われた。
針筋電図検査:随意収縮において、明らかに筋力低下・筋萎縮のある大腿四頭筋で、MUP*の減少、干渉低下、巨大電位がみられた。
筋生検:上腕二頭筋において軽度の神経支配所見あり(Fiber type grouping)。

*MUP:運動単位電位 motor unit potential

上記の所見からⅢ型SMAの可能性が疑われ、遺伝学的検査を依頼

監修医のコメント

慢性の下肢近位優位な筋力低下があり、筋力低下の程度に比してCK上昇が乏しい場合、鑑別疾患のひとつとして脊髄性筋萎縮症(SMA)を念頭におく必要があります。
このような患者で、診察のみで神経原性/筋原性の鑑別をすることは容易ではありません。この場合、針筋電図を診断の指標とすることが良いと考えます。自施設での針筋電図検査が難しい場合は、専門医への紹介もご検討ください。
針筋電図検査は、明確に筋力低下のある筋で施行してください。
SMAのように、遺伝学的検査で診断できる疾患に対する筋生検の適応は慎重に判断する必要があります。針筋電図や遺伝学的検査を適切に用いて、他疾患との鑑別を行うことが重要です。

神戸大学大学院医学研究科 脳神経内科学 関口 兼司 先生

遺伝学的検査・受付窓口のご案内

東京女子医科大学 遺伝子医療センター ゲノム診療科

特任教授:齋藤 加代子 先生

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E-mail:gene.ba@twmu.ac.jp


神戸大学医学部附属病院 検査部

名誉教授:西尾 久英 先生  
部長:三枝 淳 先生

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E-mail : genelabo@med.kobe-u.ac.jp
(検査依頼方法:ダイレクトに検査部に依頼し、検体を送ります。費用は、保険診療、病院間契約で対処します。)


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電話:049-232-3131 Fax:049-232-3132

遺伝学的検査の検査実施料

脊髄性筋萎縮症が疑われる場合に行われる遺伝学的検査に対して、以下の遺伝学的検査料を、原則として患者1人につき1回算定できます。2回以上実施する場合は、その医療上の必要性について診療報酬明細書の摘要欄に記載ください1

5000点:「D006-4」遺伝学的検査(処理が複雑なもの)2

注) 遺伝学的検査の実施に当たっては、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月)3及び関係学会による「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2011年2月)4を遵守ください。
1. 平成30年3月5日保医発0305第1号診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1(医科点数表) (http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html)Accessed May 8, 2018
2. 平成30年厚生労働省告示第43号 診療報酬の算定方法の一部を改正する件<第2章>検査 (http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html)Accessed May 8, 2018
3. 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月) (https://www.ppc.go.jp/files/pdf/iryoukaigo_guidance.pdf)Accessed April 27, 2018
4. 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2011年2月)(http://jams.med.or.jp/guideline/genetics-diagnosis.pdf)Accessed April 27, 2018

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