ケースレポート
紹介した症例は臨床症例の一部であり、全ての症例が同様ではありません。
効能・効果、用法・用量、禁忌を含む使用上の注意等につきましては、最新の添付文書をご参照ください。
全ての写真及び動画は患者さんご本人又はご家族の許可を得て掲載しています。
3歳9ヵ月で診断、10歳で治療開始した症例(Ⅲ型SMA)
(治療開始2年11ヵ月後の報告)
群馬県立小児医療センター神経内科
渡辺 美緒 先生
(治療開始2年11ヵ月後の報告)
群馬県立小児医療センター神経内科
渡辺 美緒 先生
診断時年齢、性別
3歳9ヵ月、男児
出生歴
在胎36週6日切迫早産のため経膣分娩で出生。出生体重2314g、仮死なし。
発達歴
2ヵ月齢:追視
3ヵ月齢:あやし笑い
4ヵ月齢:頸定、寝返り
6ヵ月齢:独座、喃語
8ヵ月齢:つかまり立ち
9ヵ月齢:ハイハイ
1歳:独歩、有意語
2歳:二語文
現病歴
【1歳6ヵ月】 | 近医皮膚科にて下腿の筋肉の付き方に左右差があるとの指摘を受けた。近医小児科を受診したが、原因は不明であった。 |
【1歳10ヵ月】 | 左膝血管腫を外科的摘出し、その後3ヵ月間にわたりギプス固定をしていた。このころから立ち上がりが困難で、左右に揺れるように歩行していたが、ギプスの影響と考えられていた。 |
【2歳10ヵ月】 | 当科を紹介受診。血液検査、骨格筋CT、MRI検査にて骨格筋量の低下を指摘し、リハビリテーションを開始した。その後も階段昇降に手すりが必要で、ジャンプができない、走るのが遅い、Gowers徴候が陽性など筋力低下の所見が持続した。 |
【3歳9ヵ月】 | 精査のため専門病院を紹介受診。近位筋優位の筋力低下、深部腱反射減弱~消失、手指の安静時振戦、筋電図にて神経原生変化を認め、SMAを疑われ、遺伝学的検査にて確定診断に至った。その後リハビリテーションにて対応した。 |
【6歳】 | バルプロ酸ナトリウム(VPA)の治験に参加したが効果は認められなかった。 |
【8歳】 | 長距離移動時に車椅子の使用を開始した。 |
【9歳6ヵ月】 | スピンラザ投与目的にて当科紹介となった。 |
家族歴
弟がⅢ型SMA
投与前所見
深部腱反射消失、Gowers徴候(+)、関節拘縮は認めない
投与前検査所見
◉ 運動機能
• | 拡大Hammersmith運動機能評価スケール(Hammersmith Functional Motor Scale-Expanded: HFMSE):51点 |
• | 6分間歩行試験(6-Minute Walk Test:6MWT) :237m |
• | 上肢モジュール改訂版(Revised Upper Limb Module:RULM):35点 |
• | 握力:右 4.25kg/左 3.25kg |
◉ 徒手筋力テスト(MMT)
4程度
◉ 遺伝学的検査
SMN1遺伝子欠失、SMN2遺伝子4コピー、NAIP遺伝子欠失なし
診断
Ⅲ型SMA
スピンラザ髄注12mg
5.効能・効果に関連する注意(抜粋)
  5.2 | SMN2遺伝子のコピー数が1の患者及び4以上の患者における有効性及び安全性は確立していない。これらの患者に投与する場合には、本剤投与のリスクとベネフィットを考慮した上で投与を開始し、患者の状態を慎重に観察すること。 |
Biogen-108674